この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 兄さまは屋敷に戻るとすぐ自室に向かわれた。

 誰かに手紙を(したた)めていたらしく、書き終えると、それを届けるよう朔じぃに頼んでいた。

 そうしてからやっと支度を始める。

 初陣の時に母さまに仕立てていただいた黒羅紗の軍服。

 今回は同様に白木綿の筒袖(つつそで)も仕立ててもらい、それを内に着込んでいた。

 左腕には日輪と「會」の肩章。

 腰には弾薬を入れるための胴乱をつけ、白い帯を巻きつける。

 そこに小刀を差し、大刀は革で肩から下げた。

 そして額には鉢金入りの白い鉢巻き。


 母さまは朝食を残した兄さまのために、お弁当をこさえている。

 だから兄さまの着替えは、私が介添えしていた。



 「……お前、俺の介添えなんかしていていいのか。
 本当は 雄治のところへ、最後の挨拶に行きたいんだろう?」



 兄さまは私を気遣って、そんなことをおっしゃる。



 ――――本音を言えば、今すぐにでも会いに行きたい。



 もしかして最後かもしれないお姿を、この目にしかと焼きつけておきたい。

 けれど 今までそうさせてくれた兄さまを、(ないがし)ろにはできない。


 感謝の気持ちを込めて、ちゃんと送り出したいの。



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