この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
それでも兄さまのお心遣いがありがたくて微笑んだ。
「兄さま。どうか今日だけは、“行ってこい”とおっしゃらないでください。
私はしっかりと兄さまをお見送りしたいのです」
私がそう言うと、兄さまは「そうか……」とつぶやいて目を細めた。
兄さまの支度がすむと、準備しておいた膳を用意する。
膳の上には、勝栗・大豆・胡桃・松葉を盛ったお皿をのせていた。
これは、会津藩士ならばどこの家庭でも行われている、戦場に出る時の家族との送別の膳。
『戦に勝って(勝栗)、豆(大豆・達者という意)で来る身(胡桃)を待つば(松葉)かり』
という縁起をかついで、戦地へ赴く人の武運を祈るものでした。
「さ、兄さま。水盃を」
膳についた兄さまは、目を伏せて漏らす。
「俺は、無事に帰ってくるつもりなど毛頭ないのだがな……」
「兄さま……」
その言葉に、私の顔が切なく歪むと、それを見た兄さまが、気遣かって軽く笑みを見せておっしゃった。
「そうだな。せっかくゆきが用意してくれたんだ。いただくとするか」
励まされるように言われて、ホッとしながら盃に水を注ぐ。
兄さまはそれをグイッとあおると、栗や胡桃には手をつけずに席を立った。
「ありがとう、ゆき。行ってくる」
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