この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 抱き寄せられて、うれしくないはずがない。
 けれどそれでごまかされたくない。

 温かな胸が心地よくて。
 力強く聞こえる鼓動が、愛おしくて。

 けれど、そのすべてが失われてしまうのが怖くて。


 私は泣いた。愛しい人にしがみついて、大声をあげて泣いた。
 そんな私の耳元に、利勝さまはできるだけ優しい声を落とす。



 「……今は、泣きたいだけ泣いてもいい。だが、それで気が済んだら、必ず前に進むと約束してくれ」



 その言葉に、ピクリと反応する。
 泣き腫らした目で、思わず利勝さまを見上げる。


 ――――今までにないくらい近い距離で、
 見たことがないほど、優しいお顔をされてる。



 「覚えているか?兄上が死んだとき、お前がそう言ってくれた。だから俺は、前を向くことができた」



 照れくさそうに、笑ってくださる。



 「お前のおかげだ。―――ゆき」

 「………!」



 驚きで、涙が 止まった。



 「ゆき」



 ………初めて。初めて名を 呼んでくれた。


 私の名前。


 私の名前って、こんなに光っていたっけ?
 こんなに愛しいものだったっけ?



 「ゆき……」



 その柔らかな呼びかけに、私の心が、甘く温かく染み渡ってゆく。


 ――――ああ。こんなに。

 こんなに 名を呼ばれて、せつなくなる人なんて他にいない。

 こんなに たまらない愛しさを感じる人なんていない。


 あなただけ―――そう

 あなただけなの…………。





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