この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
第四章 会津の一番長い日〜白虎隊士・林八十治の記憶〜
白虎隊 出陣
………ああ。よかった。
見送りに ゆきが来ている。
継母上も。それから まつも。
まつが来てくれたから、ふたりのことは大丈夫だろう。
たとえ継母上が、ゆきとともに自害なさろうとしても、必ずまつが止めてくれるはずだ。
昼九ツ半(午後1時)頃、出陣のため城門を出て行進しながら、三人の姿を見つけて安堵の息を漏らした。
ゆきはまっすぐに、俺のふたり前を行く雄治を見つめている。
雄治も。群衆の中からゆきを見つけて、そちらへ顔を向けている。
ふたりが頷きあうのがわかった。
そしてゆきは俺を見つけると、深々と頭を下げてくる。
――――よせよ。頭なんか下げるな。
最期にお前の顔を、この目に焼きつけておきたいのに。
俺は継母上とまつを見た。
ふたりとも頭を下げ、頷いてくれる。
(まつ。継母上とゆきを頼んだぞ)
その気持ちを込めて、俺も強く頷き返した。
――――俺達 白虎士中二番隊は、これから宰相(容保)さまに付き従い、滝沢本陣へと出向く。
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