この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


けれどもその声を、ちゃんと聞いてくれた者がいた。



「―――ようし、わかった!俺が介錯してやる!!」



それは 野村どのの声だった。



野村どのは腹に小刀を当てて、今まさに腹を切らんとしていたところを、それを投げ出し、大刀を抜いて駆けつけてくれた。
 立ち上がることもできず、その姿にすがるように野村どののほうへ身体をずり寄せてゆく。



「野村 駒四郎!最後のお世話をさせてもらうぜ!!」

「すまない、頼む……」



野村どのと目が合うと、お互い頷きあう。
目を閉じて、(こうべ)を垂れるように首を差し出すと、野村どのが後ろへ回り込み、刀を振り上げるのがわかった。



(よかった。これで間に合う……)



安堵で意識が緩むと、ゆきの笑顔がちらついた。





―――ゆき。今 どこにいる?



俺達はここだ。



いつかでいい。俺達を見つけてくれ。



そしてどうか、幸せになってくれ。



いつも笑顔を絶やさぬような、そんな幸せな日々を送ってくれ。



お前をいつも見守っているから。





――――そして、もしも……もしも 来世で、

お前と再び めぐり逢うことができたなら。



その時は、今度こそ 俺は――――。












「あの世で会おうぞ!八十治!!」



野村どのの声のあとに、首に衝撃が走った。








俺の意識は


痛みや苦しみは


そして 想いは





すべてそこで 途切れた。







< 418 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop