この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 今度はさき子さまが、その言葉をぴしゃりと遮った。



 「うるさい!饅頭ごときで大声をあげて!まったく(うつわ)の小さい男ね!!」

 「なんだと!?」



 さき子さまは立ち上がって、利勝さまに“イ〜だ!”って顔であっかんべをする。
 利勝さまもそんな姉君を大きな(まなこ)で睨みつけた。



 「あの…っ!私いいです!これ食べてください!」



 ケンカが始まりそうな勢いに、驚いて涙が引っ込んだ私は、手にしていたお饅頭をあわてて盆に戻した。



 「いい!いらない!それはお前が食べろ!」



 ぴしゃりと言われて、私は肩をすくませる。



 「はいはい!もうそれくらいにして!」



 頃合いなのか、くら子さまが手を叩いてさき子さまと利勝さまを(いまし)めると、存外(ぞんがい)素直にふたりの肩が緩んだ。

 (いさか)いがおさまったことを確認するようにくら子さまはひとつ頷くと、穏やかに口を開く。



 「雄治。お前はおゆきさんを、お屋敷まで送ってさしあげなさい」

 「「ええっ!!?」」



 くら子さまの言葉に、驚いた私と、利勝さまの声が重なった。










 ※(うつわ)……人物の力量・才能。

 ※(いまし)める……悪い行いなどについて、してはいけないと注意する。

 ※存外(ぞんがい)……物事の程度や様子が予想と異なること。思いのほか。案外。

 ※(いさか)い……言い争い。けんか。

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