この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 私もその瞳を見つめ返す。

 けれどなぜか、そのまっすぐな眼差しを受け止めるのがつらい。



 「そ……それはやはり、忠義のためですか……?」



 すくんで弱気になる私を見つめたまま、兄さまはふっと視線を和らげた。



 「もちろん忠義もそうだ。だが それだけじゃない。
 俺は、自分の心にある正義のために戦いたい」



 『正義』……。



 兄さまは閉め忘れた障子のあいだから庭を見遣った。


 残暑はまだ残っているけれど、そこから吹き込んでくる風はもう秋のものに変わっていた。



 「今や我が会津藩は、孤立無援の厳しい状況に置かれている。

 だが我らの主君は、何も悪いことをしておられない。

 藩を存亡の危機にさらすこともいとわず、誠心誠意をもって、朝廷と幕府に忠義を尽くしてきただけだ」



 兄さまはそうおっしゃいながら障子の近くまで行き、そこに佇む。



 私は黙って、その背中を見つめた。



 「己の私利私恨のために戦を仕掛けてきたのは薩長のほうだ。

 たとえ賊軍の汚名を着させられようと、理不尽な相手にはあくまでも戦う。

 我ら会津武士は、保身のために恭順を示す諸藩とは違い、最後の一兵まで敵に屈したりはしない。

 それが俺達の正義。それが俺達の会津魂だ」


< 289 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop