この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 冗談めかしておっしゃるから、



 「そうですよ。私は兄さまがいないと、てんでダメなんですから。
 兄さまも、うかうか死んでられないですよ」



 軽口の中に、一縷の望みを託して笑う。けれど。



 「お前なら 大丈夫だよ。きっと 大丈夫」



 穏やかな中に強さを秘めたような口調で断言されて、突き放されたような、託されたような、そんな不思議な気持ちになる。

 そんな私を、眼差しだけで優しく包み込むように兄さまは微笑むと、



 「―――そろそろ行くよ」



 そうおっしゃって、背を向けて玄関を出た。
 私も門のところまで見送ろうと後に続く。



 (―――兄さまをお見送りしたら、すぐに利勝さまのところへ向かおう)



 たとえ もう出立されたあとでもいい。

 利勝さまに会いたい。

 この衝動を抱えたまま、じっとしているなんてできない。


 これが 最後かもしれないから。


 玄関を出ると、外は騒然としていた。
 母成峠の敗報が城下に広まり、町人達が急ぎ避難し始めたのだ。

 門の外を、荷物を抱えてあわただしく行き交う人々を目の当たりにして、私の胸は不安に揺れる。


 こんな混乱した町中を、

 私は 利勝さまのもとまで駆けて行けるだろうか………?



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