この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
利勝さまのお顔にも、めずらしくやさしい笑みが浮かぶ。
そしてそれを引き締めると、私に尋ねた。
「敵はすぐそこまで迫ってきている。
敵が城下に侵入する前に、母上と姉上は城へ入ると言っていた。
お前も半鐘が鳴ったら、城へ避難するんだろう?」
城下に住む武家の婦女子達には、敵が城下まで迫った際、半鐘を鳴らすので城へ避難するか城下を立ち退くよう、前もって家並み触れが出されていた。
けれども私は笑って、ゆっくりかぶりを振る。
利勝さまがわずかに驚いて、目を瞠った。
「私の足では、お城へ入ったとしても、何のお役にも立てません。ムダに兵糧を費やしてしまうだけです。
それならば私はここで、お父上さまと兄さまのお帰りを待とうと存じます」
それを聞いた利勝さまのお顔がにわかに曇る。
「もし 敵が攻め込んできたら…」
「その時は、自害いたします」
「 !! 」
戸惑いを見せながら、利勝さまは兄さまを振り返る。
兄さまは、私の言葉を肯定するように頷いた。
どうせ この身では、なんのお役に立つこともできない。
ならばせめて負担にならぬよう、敵に捕われ辱めを受けて家名に傷をつけぬよう、この命を絶つまで。
「利勝さま。私だって、これでも武家の娘です。いざという時の覚悟はできております。
それに、私の願いはすでに利勝さまが叶えてくださりました。これで 何の悔いもございません」
だから 私は笑える。
死を身近に感じても、あなたとともに 逝けるなら。
私は何も こわくない。
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