この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 そのあとの私は食事ものどを通らず、途中で膳を下げてさっさと 自室へ戻った。



 ………兄さまの声が、深く 胸に突き刺さっていた。



 『理由はどうであれ、そいつは 掟を破った』




 ――――私のせいで。




 外で 女子と言葉を交わしてはならないのに、迷子になって途方に暮れていた私を放っておけなくて。

 声をかければ、掟に背くとわかっていながら。

 それなのに、私を 助けて下さった。





 ………だからだったんだ。


 利勝さまが必要以上に、言葉を発しなかったのは。

 緊張した面持ちで、しきりと辺りを窺うそぶりを見せていたのは。




 自室へ戻るとすぐ床にもぐり、布団に包まって泣いた。




 ――――今日は 最悪な日だ。




 私の軽はずみな行動が、たくさんの人に心配と迷惑をかけてしまった。




 (もう、決して外になんか出ない)




 外に出て、誰かに迷惑をかけるくらいなら。
 死ぬまでこの屋敷から一歩も出ない。



 私の初めてのひとりでのお使いは、そんな最悪の結末に終わった。



 
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