この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
皆が黙るなか、間瀬どのは別れ際を思い返して言った。
「帰るつもりなどないのに、それでも待つと言われるとやはりつらくてな……。
泣き言は一切言わなかったが、その目はひどく潤んでた。
あの時ばかりは、抱きしめてやりたいと思ったよ」
「なんだよ、抱きしめなかったのか?」
簗瀬どのの言葉に、間瀬どのは困ったような苦笑を浮かべる。
「これ以上想いが残るようなことしてどうするんだ。そんなことできなかったさ。
あの娘には誰よりも幸せになってほしいんだ」
たとえ思ったとしても、口にできないような大人の発言に、相手もいない俺達などは「ほお〜」と感嘆に近い声を漏らす。
(……間瀬どのも、俺や雄治と同じように、大切な人の幸せを望んでいたんだな)
たとえ自分の手で幸せにしてやることはできなくとも、
それでも誰よりも幸せであってほしい。
ただそれだけを願って。
………ああ。そうか。そうだよな。
皆もそんなふうに、
離れたくない相手と最後の挨拶を交わして、
別れてきたんだよな………。
「源七郎!お前も罪作りな男だなあ!きっとその娘は、一生お前を忘れないぜ!?」
野村どのが彼らしい発言で、バシンと強く間瀬どのの背を叩く。
まわりにいた十七歳組は、皆 羨ましいぞとばかりに間瀬どのを小突いてた。
「いや、雄治もなかなかのもんですよ。俺の妹との別れ際のとき……」
「ばか八十っ!俺のことはもういいんだよっ!!」
暴露しようとした俺の首を雄治が腕で締め上げる。
こうしてふざけあうのも これが最後。
だからだろうか。
この時の俺達は、精一杯 笑おうとしてた。
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