この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「雄治……!お前 どうしてここに……!」
やばい。声がうわずる。
「俺も小用」
睨んだまま雄治は言う。その声はすでに怒気を孕んでいた。
うそだ。俺達の姿が見えなくなるほど遠く離れたからだ。
「俊彦、用が済んだら先に戻っててくれ。俺は八十と話がある」
「あ……ああ」
俊彦は気まずそうにこちらを一瞥して頷く。
俺も頷き返した。気にするなと言ったつもりだった。
去って行く俊彦の後ろ姿を見つめる。
俺の心を気遣かってくれた友に感謝しながら。
俊彦の姿が消えると、俺と雄治のあいだに気まずい空気が流れた。
また、稲光り。そして雷鳴。
雨粒が顔に当たって、顔をそらしたくなる。
だが雄治はそんなことも気せず、俺を睨んだまま動かない。
重苦しい空気を霧散させたくて、抜きかけた刀をわざと音を立ててパチンと鞘に戻した。
「……なんで、言ってくれなかった?」
その音を皮切りに、雄治が話を切り出す。
「……何のことだ」
「とぼけるなよ!実の兄妹じゃなかったってことだよ!」
雄治にとって、それですべてが納得いくのだろう。
それほど俺のゆきに対する態度は、『過保護な兄』でも首をひねるものだったのかもしれない。
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