この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「見事だったぞ、和助」
皆は 和助の死に様を称えた。
「みんなも和助に遅れるな!黄泉の国でともに会おう!
………さらばだ!!」
篠田どのは 最後に皆を見渡して笑うと、死に方の模範を示すように、小刀で勢いよくのどを突いてどっと倒れた。
ふたりの死が合図となり、勇気づけられた隊士達は次々に死を急いだ。
ある者は腹をさばき、ある者はのどを切る。
痛みと苦しみに耐えながら死んでいった仲間達の血が、地面を赤く染めてゆく。
「悌次郎……どこにいる?すまんが俺は 先に逝くぞ……」
はぐれたまま、とうとう会えなかった悌次郎の安否を気遣いながら、井深はのどを切り倒れた。
「八十治……永瀬。昨夜は余計なことを言ってすまなかった」
近くで座っていた 俊彦が言う。
「何言ってんだ。そんなこと気にするな。
俊彦……お前とも、ここでお別れだな。今まで世話になった」
俺が笑うと、俊彦も笑みを返す。
「これで……思い残すことは何もない」
俊彦は一度 静かに目を閉じると、再び開いたその瞳に、覚悟を決めた深い色を滲ませていた。
そうして 落ち着いた動作で作法通りに腹を切り、前に伏した。
それを見届けると、俺は雄治を振り返る。
「俺達も 逝こう」
ずっと手拭いを見つめながら、痛みに耐えていた雄治は、俺に顔を向けると、その表情を緩めて強く頷いた。
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