この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
俺は雄治の前に進み出ると、片膝をつき顔を窺う。
顔からすっかり血の気が引いてしまい、雄治の顔は青白い。
それとは反対に、変な汗が涙の跡とともに頬を伝っている。
「……お前には、ずいぶん苦しい思いをさせてしまったな」
「なんの……。これくらい、たいしたことないさ」
強がりを言う。か細い雄治の声。
あれほど お前を生かしたいと思っていたのに。
今はただ、この苦しみから少しでも早く解放してやりたい。
「雄治……俺を刺せるか?」
約束どおり 刺し違えたい。
だが 雄治の身体に、俺の息を止められるだけの力が残っているかどうか。
「馬鹿にすんな……。それくらい訳ないぜ」
雄治は震える手で、腰から小刀を抜いた。
恐怖心からではない。
おそらくもう、身体がいうことをきかないんだろう。
俺も腰から鞘ごと小刀を抜くと、ゆっくりと刀身を抜き放った。
雄治は力なく笑う。
「八十……。馬鹿だよ……お前は。本当に馬鹿がつくほど、くそ真面目な奴だ……。
そんな約束、いつでも切り捨ててしまってよかったのに……」
俺も笑った。
それは 褒め言葉だと思った。
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